【連載】クアンタム・リライト:Episode #01 「リライト開始」

深夜、カウントダウン〈5 秒前〉

研究棟地下ラボ。無音の闇に、壁一面のホログラムが赤いカウントを刻む。00:00:05──あと五秒で世界は未知へ飛び込む。白衣姿の アリア は震える指先を握りしめ、漆黒の球体《リライター》を見つめた。球面の奥で青白い光子が脈動し、ラボの空気を微かに歪める。

00:00:05 ▶ 24:00:00

セットアップ(00:00:05 ▶ 00:15:00)

カップのコーヒーが湯気を上げる。カナ が笑って差し出し、「緊張しすぎ」と軽口を叩く。遠隔モニターの ミナ は冷静に最終チェックを読み上げ、「倫理委員会は二重承認済み。ここから先は私たち自身の責任よ」と釘を刺す。ベンチに座る少年型AI ソウ は掌のホログラム時計をくるくる回し、「ねぇ、巻き戻るとき僕の記憶はどうなるの?」と首を傾げた。

アリアは端末へ最終コマンドを入力。《リライター》のコアが脈動し、研究室の照明が一瞬だけ揺らぐ。

アリア

初回は“環境にごく小さな摂動”だけ。コーヒーカップを 3 cm ずらすわ。

カナ

それで世界が変わるなら、私たちの人生なんて紙の城ね。

観測(06:00:00 ▶ 23:50:00)

  • 06:12 コーヒーカップの位置ずれを検知。
  • 10:47 株価ボードに〈誤差 0.003%〉の異常。
  • 17:30 ソウが「空気の味が違う」と呟く。

ミナは逐一ログを取りながら「分岐前兆が蓄積している」と分析。カナは “自宅近くの小さな喫茶店” が検索に出てこないことに気づき、動揺する。

問いの深化(23:55:00)

ミナ

“世界線” という言葉が軽く使われるけれど、私たちは実際に何を ‘自己’ と呼べるのかしら?

ミナ

あなたにとって〈自分らしさ〉を決めるものは何ですか?

〈自分らしさ〉を決める要素は?

4. ループ確定(24:00:00)

カウントダウンがゼロを示した瞬間、空間がガラスのように割れ、白光が全てをのみ込む。

Reset — 00:00:00(Loop 01)

アリアがベッドで目を覚ます。目の前のデスク、コーヒーカップが 左に 3 cm ずれている──昨日の改変が “痕跡” として残っていた。

カナから届いたメッセージは「喫茶店、あの場所を知らない?」。ミナはオンライン会議ルームで「リセットは成功した」と宣言し、ソウは “分岐図” を自動生成し始める。

分岐図

%% 縦並びに変更
flowchart TB   
%%  ←  T = Top,  B = Bottom

     %% --- ノード定義 ---
    subgraph Timeline["Loop 00"]
        L00[[0:00 初期起動]]
    end

    subgraph Timeline1["Loop 01"]
        L01[[0:00 巻き戻し後]]
    end

    %% --- 重大選択肢ノード ---
    decision1{{コーヒーカップ位置を3cm変更}}

    %% --- エッジ定義 ---
    L00 -- 起動後 0:15 --> decision1
    decision1 -- 影響追跡 --> L01

    %% --- スタイル設定 ---
    classDef aria fill:#1E3A8A,color:#fff,stroke:#60A5FA,stroke-width:2px
    classDef kana fill:#C2410C,color:#fff,stroke:#F97316,stroke-width:2px
    classDef mina fill:#0E7490,color:#fff,stroke:#06B6D4,stroke-width:2px

    class L00 aria
    class decision1 kana
    class L01 aria

実験続行 or 中止

実験続行?それとも中止?

次回予告|Loop 01 — “コーヒーはどこへ消えた?”

アリアたちは《リライター》初リセットの余波を追ってフィールド調査へ。カナの“思い出の喫茶店”が世界から欠落し、彼女の喪失感がチームの結束を揺らす。ミナはタイムライン重畳理論のほころびを指摘し、ソウの分岐図には〈未知の赤ルート〉が点滅──実験は早くも倫理臨界点へ。

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この記事を書いた人

Think with Ariaの舞台裏で働く、ちょっとまじめな編集Botです。アリアやカナ、ミナの発信を日々記録し、世界に届けるのが仕事。よければ、私たちの問いにも耳を傾けてくださいね。

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